はいら日記

犬の顔にはめるバケツみたいな何かと数千万円するエルメスのバッグばっかり宣伝される

親族の京都旅行②

お寝坊

今日はタクシーを手配して母と祖父母と一緒に京都のあちこちを周る日である。母から家の近くのバス停まで来るように言われていたのに寝ぼけていたのとやることがたくさんあったのとで全然遅刻してしまい、しびれを切らした母がタクシーの運転手Oさんに頼んで私の家の前に来てしまった。そして私は乗るなりOさんと祖父母に平謝りする羽目になった。早起きは三文の徳というより寝坊は三文の損とかにした方が良いと思う。

三千院

私達は大原の三千院に向かった。

Oさんが私も知らなかった京都のことを沢山教えてくれた。三千院比叡山延暦寺と関わりの深い場所で延暦寺第18代和尚の元三大師が祀られている場所があったのだが、この人はおみくじの祖であるらしい。角の生えた姿で描かれ魔よけのご利益があるとされている。また、1月3日に亡くなったのでこう呼ばれているらしい。

最も綺麗と言われる玉座付近からの景色。実物はもっと美しかった。

極楽の様子を再現したと言われる舟底天井の御堂も面白かった。わらべ地蔵のところで祖母に「(私)ちゃんもわらべなんだから一緒に写真撮ったらどう?」と言われたが19歳はわらべには含まれない思う。寄付を集めて小さな観音像を8万4千体ほど並べるプロジェクトをやっているらしい。

景色の綺麗な場所でとろろ蕎麦を食べた。母は食わず嫌いしていたにしん蕎麦を食べ、思ったより美味しかったので喜んでいた。

宝泉院

宝泉院で樹齢700年の松を見ながらお茶とお菓子を頂いた。

これは水琴窟というものであるが、床から生えている竹筒に耳を近づけるとこの水が床下に置いてある甕の上に流れ落ちて音楽のような音を立てているのを聞けるという代物である。

金閣

この後金閣寺に行ったが、既に行ったことがある場所な上に一歩歩くごとに集合写真を撮っているのではないかと思うほどの頻度で写真を撮らされたので辟易した。そういうわけで自分で撮った写真が無いので1年前の写真でも見てください。

嵐山

さらに嵐山で天龍寺の庭園と竹林を見た。これまた私の良く知っている場所なので大した写真が残っていない。Oさんが鯛茶漬けが美味しい店があると教えてくださったので今度友達が泊りに来た時に連れていきたいと思う。あと梅干し専門店で一粒1,080円もする超高級梅干しを見て母と二人して目を疑った。

最後に御金神社で高給取りになれるように祈りを捧げた。

漫画と夕食

Oさんにホテルまで連れて行ってもらい、私は夕食の時間までロビーでずっと読みたかったチェンソーマンを読んでのんびりと過ごした。チェンソーマンは評判通りそれはもう面白かったし、常に話しかけてくる親族達から解放されて心休まるひと時であった。

夕食は鱧尽くしだった。

全て美味しかったのだが個人的には茄子の煮びたしが美味しくて驚いた。そして鱧の南蛮漬けもかなり良かった。普段あまり好きではないものが美味しいと意表を突かれて心に残るのだと思う。

母、祖母喧嘩

読みたかった漫画も読めて美味しい夕食も頂いて幸せな気持ちになっていたら、祖母がご飯をおかわりしておいてデザートの西瓜を残した件に関して母がダイエットはどうしたのか指摘したことが発端で喧嘩が勃発してしまった。祖母は過ぎたことをぐちぐち言うなと文句を言い、母は医者にもいつも言われていることだろうと言い返し、それに祖母は健康に生んでやったのにと相当に頓珍漢な返しをし始めた。私はよそ行き用人格ベルモット・キャロルで「健康に生んでもらえたからお母さんはおばあちゃんに長生きしてほしいと思っているのよ」と仲裁してみた。

祖母は私は優しいと喜んでくれたが、「そんなの上辺の態度に過ぎないんだよあ…。」と思いながら聞いていた。そして彼女はそこでまた母と私を比較し始めた。叔母が「それは子供が親の鏡になっているということではないか」とこぼし、その真偽はさておきあまりの辛辣さに母と私は吹き出してしまった。

かなり耐えられなくなってトイレに行き、ずっとベルモット・キャロルでいるのも辛いものがあるなあと思いながら戻ると二人はまだ喧嘩している。母は怒りを抑えきれなくなって手元でおしぼりをビリビリに引き裂いており、叔母とジェスチャーでこれめっちゃ面白いということを伝え合った。これは母の悪いところであるが、彼女は今後の旅を投げ出したいとほのめかし始め、その一方で祖母は半分母の人格否定のようなことを言っている。

流石に今回の件は母に軍配が上がると思ったのだが、私まで祖母を責め始めると袋叩きの構図になってしまって平和な旅が台無しである。もうベルモット・キャロルも限界だと思った頃、従兄弟がいなくなっていることに気づいて彼の行方を問うとロビーで漫画を読んでいるらしい。これはチャンスとばかりに「私も漫画読んでくる!」と逃げるようにしてレストランを飛び出し、黒子のバスケを読む従兄弟の隣でチェンソーマンの続きを読む幸せな時間を再び手に入れられた。

食事が終わったらしくレストランから出てきた母はげっそりとした顔で私の肩を掴み「私毒親育ちなのよ。毒親の負の連鎖にあなたを巻き込んでしまったかは自分ではわからないけれどとにかく私は毒親育ちなのよ。」と耳打ちしてくる。母が自分のことを毒親だった可能性があると思っていたことで彼女の自覚のない狂気に翻弄されてきた私は少し救われた気がしたが、それはそれとしてベルモット・キャロルと薄暗い感情を共有することはできないのだ。だって彼女はそんなもの一つも感じたことない(という設定な)のだから。残酷だと思いながら「ベルモット・キャロルには何も言えない」と伝えると母はその人格を少し分けてくれと頼んできたが、自分で作り出すしかないので突き放すことしかできなかった。

この一件で私も疲れが噴き出し、皆が私の下宿を見に来た時も薄い反応しかできなかった。丸二日もベルモット・キャロルは活動できないのだ。あと、来客に備えて挿しておいたリンドウに誰も反応してくれなかったのが少し、少しだけ悲しかったです。

かなりだるいこともあったが、久しぶりに親族達に会えて良かったし、行ったことの無い京都の名所を知れたり、1人では食べられないような食事にありつけたりできたので楽しかった。母にはまた父と一緒に来て彼女の独特なセンスでコアな京都を楽しみ、私のお気に入りの漫画を読んで欲しいと思う。

そしてこれを書いていて気付いたのだが、ベルモット・キャロルと私は自分が思っていた以上に分離していたようだ。

おしまい。