はいら日記

犬の顔にはめるバケツみたいな何かと数千万円するエルメスのバッグばっかり宣伝される

金の味のパフェ

高校同期kと近くの私大の学食にパフェを食べに行った。私の大学では年がら年中このパフェの噂で持ち切りである。どうやら貧乏国立大生たちは私大の財力が生んだパフェという甘い汁だけを吸って生きているらしい。はたして噂に違わぬ味なのかぜひともこの目で確かめてみなければと息巻いて川の向こう側まで二人でぽてぽてと歩いて行った。(この歩く時のぽてぽてという擬音は森見登美彦独特の表現の中でも特に私の印象に残っているものである。皆さんも森見を読め!!!!!)

川を超えると町の雰囲気がガラッと変わる様子は毎度毎度私の心に暗い現実を突きつける。まず安く量の多い料理屋が減り、カフェが増える。次に街を行く若者の雰囲気が変わる。眼鏡にチェックシャツ、デニム、黒リュックというネットでさんざん擦られたまさにその恰好をした人々が跋扈しなくなる。ちなみに私の大学は遊びに来た東大の友達が「東大が私文に見えてきた」とのたまうほどイケてないし、すっぴんで行っても誰も何も思わないという美意識が低すぎて地殻まで達するような魔境である。やはりここは日本で一番イケていない大学なのだろうか…。

問題の私大に着くと、キャンパス内のベンチに洒落た男女の集団が座り談笑するという入学案内パンフレットでしか見たことないような光景が眼前に広がっていた。しかもこの大学、昔からある建物に合わせて新しい建物も全て赤レンガで作り、色づいてきた木々の葉、鉄の装飾のついたベンチも相まって雰囲気はまさにヨーロッパの歴史ある街。こんな気の利いたことができるのも全ては金、金、金である。私たちは何とかカフェのある建物に着いたものの新型コロナウイルス感染防止のため部外者の入構をお断りしますという看板に行く手を阻まれた。うちの大学の人たちが常日頃通い詰めていると聞いていた私はこんな看板気にせず学生面をして素知らぬ顔で入っていけば大丈夫と思ったが、kは看板を見て青ざめこちらのキャンパスに入っていない学部の生徒のふりをしようと提案してきた。私は彼女のこういう捻くれていない所が大好きなので黙っておいた。その後間違えて最上階の夜からしか開かないフレンチレストラン(まず何故こんなものが大学にあるのかは貧乏国立大生には一生かけても解けない疑問であるが)に裏口の階段側から入ろうとするなどハプニングもあったが何とか目的のカフェにたどり着いた。このカフェも流行りの海外のラップを流し、天井から吊り下げるタイプの照明を使うなど至る所で格の違いを見せつけてきた。こうした精神攻撃に耐え抜きながらなんとかパフェを注文することに成功したが、kの鞄からはみ出た紙に私たちの大学名が書いてあったせいで調理場のおじさんに大学がばれ、お咎めは全く無かったものの彼女の部内者のふりをすると言う策略は呆気なく潰えたのであった。これが一つ600円とは感に堪えないものがある。やはりわが大学の学生たちが通い詰めるだけのクオリティはあった。しかも種類も多かったのでこれはリピ確定だ。私はこの大学のせいで糖尿病になるのであろう。やはり金は素晴らしい。そしておいしいものは人生を豊かにする。すっかり機嫌がよくなった私はなぜかツイッターのつまらないアカウントがTLを溢れかえっていることについて滔々と語った。そういえばツイッターといえばフォローしているトピックのおすすめツイートで目を剥くほど下手な初音ミクの絵が何日も流れてき続けたことがあったがあれはいったい何だったのだろう。思わずウッとなるほど下手なのにいいねが結構ついていて普通に怒りを感じた記憶がある。

今日の授業ではスペイン語のリスニングをさせられたが私は舟を漕いでいたので耳から入ってくるわずかな情報を勝手な方向に解釈するというお決まりの現象が起こった。しかもスペイン語なんて全く聞き取れないので解釈の幅はほぼ無限に等しくなる。解釈よりも音声という刺激を受けて妄想を勝手に繰り広げると言った方が正しいかもしれない。これにより私の脳内には剥がしてそのままの鶏の皮に青い刺青をする様子が延々と浮かび続けた。不気味である。 おしまい。